「組織の内部に成果はない。そこにはコストしかな
い。ところが人は容易に内部に没入し,外部の現実か
ら遊離する。」
非営利組織の経営P134
「人は容易に内部に没入」するのは,なぜでしょう
か?
人間は,本質的に身びいきや仲間意識が強いことか
ら来ていると思います。
もちろん,身びいきや仲間意識が悪いといっている
わけではありません。
自分と血縁のある人間を身びいきすることは,自分
の遺伝子を次世代に残すためには必要なことです。
また,仲間意識も一人では弱い存在でしかない人間
が団結することによって,自分の力以上の能力を発
揮するためには,必要なことです。
こうした身びいきや仲間意識がなかったら,自分の周
りは敵だらけという弱肉強食の世界であれば,まず
生き延びることは出来ません。
われわれは,ある意味本能的に外部ではなく,まず
自分の周りにいる血縁者は仲間との関係を重視する
ように出来ているといっていいかも知れません。
海外で大事故のニュースがあると,邦人が含まれて
いないかどうかを真っ先に報道します。
外国人よりも,邦人の方が,自分と互助関係のある
人間が多いからこそ,邦人が含まれているかどうか
を気にするわけです。
これが,露骨にエスカレートすると差別意識にもつ
ながってきますが,少なくとも報道で邦人が含まれ
ているかどうかに関心を持つことは,差別ではなく
自分と互助関係にある人間を探そうとする人間の
本能みたいなものです。
「人は容易に内部に没入」するというのは,ある意
味,必然なのです。
外部とは自分の命を奪う敵であり,内部は常に自分
の生活の糧という単純な関係であったわけです。
ところが,時代が下るにつれ,分業が進み,また血縁関
係も,国籍も関係もない外部との関わりが成果をもた
らすようになりました。
外部の世界は必ずしも自分の命を奪う敵ではなくな
ったわけです。
現代社会では,成果は内部ではなく外部の存在である
顧客が対価を払うことによってもたらされます。
しかし,頭では理解できても,本能的に身びいきをし
てしまうわれわれにとっては,簡単に対応できない
のかも知れません。
ウチでは出来ませんと簡単にあきらめて,顧客の要
望に応えられない。
あるいは,食品偽装のように,顧客に誤った情報を
流し自分たちにとって都合の良い商品を押しつける
ようになってしまうわけですね。
逆にいえば,容易に出来ないからこそ,常に外部を意
識するということは,差別化につながり成果をあげる
推進力になる可能性があるということです。
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