2016年07月07日

利益は分配すべきものなのか?

「これまで利益とされてきたものは,実は,明日のため
のコストにすぎない。」
「したがって最大の問題は,リスクに見合うものだけの
ものがあるかどうかである。」

「われわれは利益を正しいリスクにかけなければなら
ない。」
断絶の時代第二部第7章

「これまで利益とされてきたもの」とあるように,利益
というものは,あくまでも利益であって独立した概念だ
ったわけです。

これからは,利益を明日のためのコストだと考えましょ
うとする提案です。

利益を狩猟生活時代の獲物として捉えるならば,それは
構成員に公平に分配すべきものであるということにな
ります。

狩猟生活時代は,当然のことながら冷凍保存技術などあ
りません。

獲物は,すべて食べつくす必要があるからです。
この論理を現代の事業活動に当てはめると大変なこと
になります。

まず,構成員は誰かということになります。
ちょっと最近,あるいま今でも?

構成員は株主であるから,全部配当に回すべきであると
いう極端な企業乗っ取り屋が暗躍しました。

もう一つの考え方は,1960年代から1970年代頃が全盛
だったのでしょうか?

構成員は従業員であるから,従業員の待遇を向上させる
べきであるするものでした。

そして,資本家は搾取する存在であり,敵視の対象であ
るとするマルクス的な労働争議となりました。

しかし,いずれもが無効であったといっていいでしょう。
西武鉄道が乗っ取られそうになりましたが,不採算路線
の廃止を提案してきました。

確かに経済効率を考えると不採算路線は廃止すべきと
なりますが,鉄道には,交通弱者の貴重な足であり,こ
れを奪うことが許さていいのかという公共的な側面が
あります。

経済効率だけを優先し,社会的責任は放棄しても良しと
するのが乗っ取り屋ですが,やはり違和感を抱く人が多
いのではないでしょうか?

また,企業は従業員のものであるとする考え方が蔓延
すると,若い方はご存知ないかも知れませんが,かつて
の国鉄(現在のJR)は,ストだらけで,車内は汚く,駅
のトイレは悪臭が漂っていました。

会社は社員のためにあるとすると,肝心の顧客満足度の
視点がなくなり従業員の満足を顧客に押しつけ,嫌なら
乗るなみたいな体質になってしまいます。

結局,乗っ取り屋も従業員満足も,多くの支持を得るこ
とが出来ず,目論見通りには進みませんでした。

利益は,狩猟生活時代の獲物とは違うということの証明
だったといえるかも知れません。

ちょっと笑い話かも知れませんが,現代でも狩猟生活を
営んでいる部族がいます。

この部族に農業を根付かせようとヤギを与えたら,全部
平らげてしまうので,農業がなかなか根付かないそうです。

農業を根付かせるためには,自分たちが食べるヤギと再
生産が可能な分だけ,一部のヤギを繁殖にまわさなけれ
ばなりません。

これと全く同じ概念が利益にも当てはまるということ
です。

事業を継続可能な必要最小限利益を稼ぎ,将来に投資し
なければならないのです。

また,利益を獲物として捉えると多いほうがいいという
ことになり,ムリをするとヤギを全部平らげてしまった
部族のようになってしまいます。

そして,利益は多いほうがいいという考え方は,しばし
ば粉飾決算や不正行為の温床にもなります。

利益が獲物だった時代の仕事は,狩りに出かけて獲物を
仕留め,構成員に分配したら,終わりという一過性のも
のだったわけです。

たしかに,利益はあくまでも利益でありコストとは無関
係のものだったわけです。

ところが,現代社会における事業活動は一過性のもので
は困るわけです。
継続性が要求されるわけですね。

しかも,われわれの寿命も狩猟採集生活とは比べ物にな
らないほど長くなりました。

狩りをしたら,それで一件落着という仕事の仕方は長く
て30年しか生きられない時代であれば,それでいいの
かも知れません。

しかし,われわれは,もはや狩猟採集生活に戻ることは
出来ません。

落ち着いて考えれば,わかりそうなものなのかも知れま
せんが,先進国ですら,多くの人が飢えと戦い,まさに食
べるためだけに働いていた時代が長かったので,利益を
コストと考える感覚が定着していないのかも知れません。

利益は,明日に備えるためのコストとして捉える感覚が
われわれの中に養われておらず,利益はあくまでも独立
した概念で,獲物の如く,分配すべきものと扱ってしま
うということですね。

さて,あなたにとっての利益は何でしょうか?


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税理士 大林 茂樹


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Posted by ohbayashiblog at 10:40│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 成果をあげる人・あげない人 

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